執拗に愛されて、愛して
「…何の話をしようとしてんの。」


 雅のその声で、私が退勤時間を早めてある場所に寄り、取ってきた書類と自分の薬指に着けていた指輪を外して、ダイニングテーブルの上に置いた。

 雅の事、早く解放して自由にしてあげよう。これが私に出来る唯一の償いと、出せた答えだった。

 出来るだけ暗くならない様に表面上には笑顔を浮かべて明るい声色を繕う。


「…私達、やっぱり合わなかったよね。そもそも1回目上手くいってないのに、2回目は上手くいくとか幻想だったし、私には恋愛とか無理だったなって思い出した。それなのに結婚とか、本当ただの気の迷いだったかも。」


 わざと雅が嫌がる言葉を選んで話す。

 もう私に愛なんて向けられなくて良い。これから私の我儘とかに傷付けられなくていい。やっぱり人生で1番好きになれた相手と交際して結婚なんて面倒なだけだった。


「私が話しに来たのはこれからの事。明日、明後日で有給取ってきたから日曜日までに荷物はまとめるなり処分するね。それと、この家は住んでも良いし引っ越しても良いし、処分費かかる様なら言って。」


 それと、共有財産は折半で良いよね?なんて次々と必要事項だけを話していた。その間の雅の表情は見ていないし、早く終わらせることに必死だった。
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