執拗に愛されて、愛して
 それから約2年後の晩冬。

 雅も大学卒業で私も2年が終わるまで残り数週間。雅が離れた所にある大企業で就職を決めていたため、同時に遠距離が決まっていた。出来る限り傍に居ようと雅の家に居たのだけれど、私はずっと怒っていた。

 というのも、雅は遠方への就職を私に相談無しに決めて、私は強制的に遠距離恋愛を強いられた。就職した時も受かったとだけ数か月前に言われて、遠距離を知らされたのは年明けてから。その件で謝罪もされずにずっと怒っていたけど、別れる選択なんて取れない程に私は雅が好きだった。だから怒っていても残り少ない時間を一緒に過ごしたくて、傍に居てしまう。


「夏帆。」


 怒っているのに名前を呼ばれたら反応せずにはいられなくて雅の方を見ると、私の左手を掴んで薬指に指輪をはめられた。

 突然の指輪に当然驚いたけれど、それよりも指輪をはめる位置に驚いて目を見開く。


「え…、これ…。」

「これは安物だからすぐにとか考えないでほしいんだけどさ。」

「うん?」

「夏帆が大学卒業したら結婚しよ。」


 まさか20歳でプロポーズされるとも思っていなくて、何も言葉が出ない。それに、雅は結婚なんて考えない人だと思い込んでいた。私も学生だし、まだまだ先の話だと思っていて、それなのにこのタイミングでプロポーズ。


「え、本気?」

「うん、本気。これから先も、一緒に居るなら夏帆がいい。」


 そう言いながら髪を掬ってキスをする。いつも細かい事を気にしてしまって喧嘩も多く、雅に怒りをぶつけてしまう事も多いのに、雅はそんな私を嫌だとは言わず私がいいと言葉にしてくれた。感動のあまりすぐに言葉は出なくて、代わりに涙が溢れ出る。

 雅からの言葉が嬉しかったのと、私の嫌な所もあったはずなのに受け入れてくれた事に凄く感動した。


「…早く卒業したい。」

「待ち遠しいな。」


 そんな言葉を交わして、雅は私の身体を抱き締めてくれた。

 思えばこの日が一番幸せな日だったと思う。
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