執拗に愛されて、愛して
「…そんな男の人、居なかったし。」

「気付いてないならそれでもいいけどさ、俺としては腹が立つんだよね。明らかに夏帆に気があるの俺からは見えてるのに、そのままにしておくの。いい加減こっちの気持ちも汲んでくんない?」


 確かに交際を隠したいは、私の我儘で始めた事で、雅にはずっと付き合わせていた。いつも真顔で気持ちをあまり出さないくせに、今は明らかに怒りの感情を表に出している。

 勝手に公表された事、嫌だと思っていたはずなのに雅がそうしたかったと遠回しにでも言っているのが伝わって、嬉しいと思ってしまった。


「今日から早速外で手繋いで、出掛けたりできるけど、どうする?」


 そう言って私の手を取って優しく握って笑いかけてくる雅。それだけで私が気にしていた事全てがどうでも良く見えてきて、釣られて笑ってしまった。

 こういうところが雅のずるいところで、好きなところだったりもする。


「どこ行く?初めての外デート。」

「あの時言ってたバーでも行ってみる?どうせなら同級生とはまだ行かなさそうな所連れて行きたいし。」

「行きたい。」


 さっきまで喧嘩していたはずなのに雰囲気はあっという間にいつも通りに戻って、一緒に図書室を出て学食まで戻って行った。

 結局こんな風に流されただけかもしれないけど、どうせいつまでも隠し続けられなかったから、このタイミングで公表して良かったのかもと思った。
< 65 / 331 >

この作品をシェア

pagetop