君と始める最後の恋
少しずつ変化する感情
「先輩!止まってください!」


 ずっと何も言わず歩き続ける先輩にそう声を掛けると人通りが少ない近くの公園まで来てようやく止まってくれる。止まってくれたは良いけどこっちは向いてくれない。


「(本当に何…。)」


 ずっと何考えているかもわからなくて謎の行動。私もずっと困惑が止まらずどうしていいか分からなくなっていた。


「…本当、君といると俺も自分が分からなくなる。」

「え?」


 私が問いかけると振り返って怒った様な表情をしている。
 その表情先週の飲み会後でも見た、全く同じ表情だ。

 時間が経った今でも、どうして先輩がそんな表情をしているのか全く理解は出来ない。

 困惑している私に先輩はどう言葉を放つか悩んでいる様だったが、ゆっくりと口を開いて声を発した。


「何で俺が好きだって言いながらあいつに触られる隙作るわけ。君が必死になってあんな飲まなくていいのに、酒に呑まれて簡単に肩抱かれて。持ち帰られたらどうすんの。」

「だから、そんなんありえないって言ってるじゃないですか!また同じ話で喧嘩するつもりですか!?」


 先輩の相変わらず意味の分からない言葉に私もあの日の様に苛立ち、先輩も私の言葉に苛立っている様子だった。

 お互いにこの話について分かり合えそうにない。
 だって、どうして先輩がそんなことを言ってくるのかわからないから。


「君のその危機感の無さがムカつくんだよ。」

「ムカつくなら離れたら良いじゃないですか!」

「それが簡単に出来たらとっくにそうしてる。」


 先輩の静かな声がはっきりと響く。

 はっきり言ってくれないと察しの悪い私には何もわからないよ。
 今も言葉足らずの先輩の言葉を理解出来ない。
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