君と始める最後の恋
 ソファーから立ち上がって私の前まで来るとスリッと軽く頬を指の背で撫でられる。

 そんな優しい触れ方に胸が高鳴る。


「泊まってって。」


 その泊まってっての言い方が、帰って欲しくないって言ってる様に聞こえて胸がキュンっとときめいてしまう。

 そんな都合いい話あるわけないのに、先輩に泊まってってと言われてしまえば、頷くしかない。

 明日の朝まで一緒に居られるなんて、何のご褒美ですか?今まで1度も朝までだなんて一緒に居られた事は無い。

 先輩は私の頷きを見ると、寝室に向かって服を取って戻ってくると、それを私に渡す。


「服は、これ使って。かなりでかいと思うけど、ズボンは紐付きのやつにしたし、履けると思う。」


 衣服を受け取るも、どうしよう、本当に私泊まってって良いの?付き合ってないって言っても、一応男女な訳で…、私の気にしすぎ?と、考えてしまう。

 この年齢になって男女でお泊まりって、普通なのだろうか。
 いくら後輩でも、そこまでする?

 今まではタクシーを使ってでも帰らされていたのに、少し期待してしまいそうになる。


「お風呂、入ってきな。」

「…はい。」


 先輩にお風呂を進められるがまま脱衣場の方へと向かう。

 1人になると、ドキドキしすぎてその場にしゃがみこむ。

 どんどん先輩が一緒に居る事を許してくれるから、本当に勘違いしちゃいそうになるの。先輩、私の事どう思っているのですか。
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