君と始める最後の恋
「先輩は何の花が好きですか?」


 何気なしにそう問い掛けると、先輩はいつもの真顔で私の顔を見ていた。

 何か言いたい事があるのかと首を傾げ、先輩の言葉を待つ。


「…今日くらい先輩やめたら?」

「えっ。」

「何その反応嫌なの。」


 先輩にそう言われてもずっと今まで先輩って呼んでいたから今更どういう風に呼んでいいかわからない。

 前もこんな事あったな。沙羅さんの家に初めて行く時、一ノ瀬先輩はややこしいからやめてと言われて、沙羅さん達の前では類先輩と呼んでいた。

 確かにもし付き合ったら一ノ瀬先輩って呼ぶのは会社だけになっちゃうんだ。


「…るい…さん。」

「固い。」

「私の限界なんです!恥ずかしさでいっぱいです!先輩こそ急に名前呼びはしんどいですよね!」

「別に。」


 そうだった、この人は普通に呼べちゃうんだった。

 迂闊に挑発したら私が死んじゃう。と、少し頭を抱えそうになった。


「うーん、でも類くんでも、沙羅さんと被っちゃうし…。」

「そういう所気にするんだ、君。」

「気にしますよ、なんとなく。類さんが今呼べる最大限では。」

「呼び捨てにすれば。プライベートだし。」


 当たり前の様に言う先輩に全力で首を横に振る。

 無理…無理すぎる…。
 私が呼び捨てとかそんなのできるわけ無い。
 そもそも先輩を呼び捨てにしている自分の姿が想像できない。
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