君と始める最後の恋
「まず、1年前にこんな俺の事好きって言ってくれてありがとう。」


 先輩の静かな声に首を横に振る。

 お礼を言うのはこっちの方だ。

 沙羅さんを好きだって言ってるの知ってるのに私の好きだという気持ちを迷惑だと言わずに居てくれた。拒まれても仕方なかったのに。


「俺は、君みたいに素直に普段から気持ちを伝えるとか出来ないし、君が言う格好良い先輩でも優しい先輩でもなんでもない。そんな俺でいいのかっていまだに思ったりする。君には何でも素直に言える小川とかそんな奴がいいんじゃないかって。」

「…何で。」

「だけどさ、離せなかったんだよ。俺以外を見る君の事なんて考えたくなかった。こんな酷い扱いしてきて、今更だけど。」


 言葉を紡ぐのが得意じゃない先輩が、必死に言葉を選びながら話してくれている。そんな先輩の姿に胸を打たれてしまって仕方ない。


「君には俺の隣に居てほしい。」


 ずっとずっと片思いしていくと思ってた。思いが通じ合える事なんて無いと思ってた。誰かと幸せになっていく先輩を端から見守るんだって、ずっと覚悟してたのに。

 先輩らしい不器用な言葉で、嬉しくて涙で目の前が見えなくなっていく。やっと言ってくれたって安心したけれど、いまだに夢なんじゃないかと思ってしまう。

 先輩は涙を流す私に、優しく手で拭ってくれていた。
 その手つきすらもずっとずっと優しい。
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