君と始める最後の恋
 コンビニでデザートを見るだけでも、あの子が好きそうとか、テレビで旅行の特集を見ているだけでも連れてってあげたら喜ぶかなとか、あれほど好きだった沙羅を目の前にしても今何してんのかなとか、何をしていても郁の事を考えてしまう。

 人の思考をこんなに奪っておいて何で本人はそんなに自信がないのか。泊まりにしたらなんだかんだずっと傍にいてくれる所も本当は凄く好きで、このまま帰したくないって常に思っていること分かってないでしょ。


「…きっと君よりも…。」


 その続きの言葉は口に出せないまま、素直に伝えられない自分にうんざりしながら、溜息を吐く。

 両想いは両想いで面倒くさい。常に君の事を考えている自分も、考えてもそれが答えが無くて、正解かどうかわからない所も、すべて面倒でうんざりするのに、だけど不思議と嫌じゃない。

 しつこいのも、面倒なのも嫌いだけど、君からのは全部愛しいって思ってしまっている。

 そんな本音は1つも伝えられないまま、夜は更けていく。
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