君と始める最後の恋
 落ち着いて冷静になって先輩の顔を見ると、違和感を感じた。職場では常に顔に掛けている物が掛かっていない。


「そういえば先輩、眼鏡…。」

「それ今?」


 呆れた様に笑う一ノ瀬先輩。

ちょいちょい外してるのも見てたけど、そんなに長時間外してるのを見たことが無かったから新鮮だった。確かにそれ今?と言われればそうだけれど…。気になってしまったのだから仕方がない。


「てか、君は何でそんなに泣いたわけ?」

「…一ノ瀬先輩、白羽さん好きですよね?」


 私の言葉になんでもない事のように「ああ」と声を漏らした。それから先程の様な冷めた表情を見せる。


「気持ちの整理はついてる、とまでは言わないけど立ち直るだけの時間はあったから。」

「…ご兄弟とご結婚されるんですか?」

「そ、兄さんとね。俺達幼馴染みだったから。兄さんと沙羅は同級生で、俺は弟的存在。最初から恋愛対象になんかなれなかった。」


 なんて平気そうに話す。平気なわけ、無い。
 平気だったら、あんな表情で白羽さんの事見ないよ。

 一ノ瀬先輩から好きだって感情が溢れてるのに、それを伝えられないもどかしさと伝えては行けなくて蓋をしなきゃいけない切なさ。全て全て苦しいのに一ノ瀬先輩は立ち直るだけの時間があったで、自分の感情に蓋をしようとしている。
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