君と始める最後の恋
「…先輩、無理です。辛すぎます。」

「同情とかそんなん要らないけど。」

「同情じゃありません、先輩が気持ちを蓋して良い弟として居ようとしてる姿を見てしまったのが苦しいんです。」


 そう言ってまた溢れ出す涙を止められなくて、我ながら面倒な体質してると思う。他人の事にこんなに涙を流すなんて。


「じゃあどうしたらいいわけ?忘れる事も出来なくて、伝える事も出来るわけないのに。」

「私の前でくらい正直に言えばいいじゃないですか!苦しいって、辛いって!何も知らない、何も思ってないただの後輩に吐くくらい簡単でしょ!?」

「…馬鹿じゃないの、本当。呆れる。」


 少し困った顔をして溜息を吐く一ノ瀬先輩。

 一ノ瀬先輩が辛い思いしているのを見ているだけなのが嫌だったから。どうにか出来るなんて思ってなくても、どうにかしたかったから。

 これがただのお節介のせいか、一ノ瀬先輩に対してだからなのかは、理解していなかった。


「誰もが君みたいに正直に感情をそのまま表に出せる奴ばっかじゃないし、真っ直ぐにはなれない。もうこうやってずっと過ごしてきた俺には、特に無理。」


 そう言って視線を私から逸らす。

 白羽さんの代わりとかそんな烏滸がましいこと絶対言えないけれど、せめて寂しい時とか悲しい時傍に居られたらいいのに。


「…もう帰りな。そんなボロボロの顔で歩いてらんないでしょ。」


 一ノ瀬先輩は私から背を向ける。そしてそのまま商店街の人がいる方へ向かって歩いていった。

 私にも分からないこの感情、誰か教えて。どうして一ノ瀬先輩の事がこんなにも気になって、思うとこんなにも苦しくなるのか。
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