君と始める最後の恋
 少し早めに着いて、上司から自分のデスクに案内される。


「2課でやっていた事とそんなに変わらないから仕事内容は大丈夫だよね?」

「はい!大丈夫です!」

「良かった、今日中途で入ってくる人がいるんだけどその人の補佐お願いしてもいいかな?説明とか最初大変だと思うけど。」


 中途入社…。初めて聞いた。

 私に新しく入ってくる人に上手く説明なんかできるだろうか。私も今日から3課なのに。と、異動初日から不安が積もっていく。


「大丈夫ですか?」

「うん、社内案内とか補佐が請け負うことだけ説明してもらえれば後はこっちで。元々他の企業の営業先の人みたいで、ヘッドハンティングされてこっちに来たみたい。」

「へぇ、優秀な人なんですね。」


 軽く説明を聞いてそう受け答えをすると「じゃあよろしくね」と取り残されてしまう。

 何か初日から心配なんだけど、大丈夫かな私。

 今まで類くんの元で鍛え上げられてきたわけだし、業務内容にそこまで不安はないけど流石に担当まで今日からってなると話が変わってくる。

 色々考え事をしていると、時間は40分を指していた。いつもならこの時間、コーヒー淹れに行くけど…。なんて、色々と考えているとデスクに置いたスマホの通知の画面が光る。ふと気になってみると連絡を送って来た相手は、類くんだった。


«コーヒー淹れておいて。»


 そんなメッセージが入っていて思わず首を傾げてしまう。

 もう私類くんの補佐じゃないけど…?わかってます?と、そうは思いつつもお願いされてるのが嬉しくて、給湯室に向かっていつも通り類くんのマグカップを掴んだ。
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