君と始める最後の恋
新環境
 それから日が経って、私は遂に3課への異動日になった。

 いつもより少し早めに出勤しようと思い、家で準備していると少しぼーっとしている類くんがこちらを見ている。


「…君さ、何でいつも早めに出んの。一緒に出れば良くない?」

「前は補佐としてやる事やっておきたかったし、今日は新環境なので!それに前までは早めに行ってコーヒー淹れて待ちたかったですし?」

「あ、そう。」


 私の説明を聞いてそこまで気にも留めず類くんも用意を始める。朝仕事に行くまでの間にスイッチが入るのに時間がかかるのかぼーっとしている類くんが可愛い。私だけが見ていられる特別な姿。


「じゃあ類くん先行きますね。また会社で!」

「うん。」


 そう返事をする類くんにぎゅっと抱きつこうとするとサラッと避けられる。


「ああ、何で!」

「今用意してるでしょ、スーツ皺になるよ。」

「意地悪しないでください!」


 そう言ってむくれていると、ふっと影が落ちてくるその瞬間に柔らかいものが唇に当たって驚かされた。


「…また後で。3課でポンコツ披露しないでよ。」

「…無理、無理すぎます…。大好きです類くん。」

「はいはい、早く行きな。」


 そんな素直じゃない類くんに少し笑って「行ってきます!」と言って先に家を出る。初めての行ってらっしゃいのちゅーを類くんからもらえるなんて、こんなの頑張れるに決まってる!

 3課出勤初日は、類くんのおかげもあってかなり浮かれていた。
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