君と始める最後の恋

　先にデスクに着いて先に情報の確認などをしていると私のデスクの隣に誰か来る。

　ふと顔を上げると、身長高めの男の人だった。その顔は何だか見覚えがあって2人とも見つめ合う。


「…郁？」

「え、結絃《ゆいと》？」


　小鳥遊《たかなし》　結絃《ゆいと》。

　大学で遠距離になるのをきっかけに別れた高校時代の元彼だ。お互いこんな所で会うなんて思ってなくてお互いに固まってしまう。

　まさかヘッドハンティングされてきたのが結絃だと思わなかった。


「補佐って…、郁？」

「そうだけど、まさか結絃がここに来るなんて…、すごい偶然だね。」

「なんだ！どんな奴か不安だったけど、郁ならちょっと安心。」


　そう言いながら笑って隣のデスクに着く。

　確かに初日が見知った相手なら安心な理由は少しわかる。周りは知らない人の中、仕事のやり方も大きく変わったりなどで、色々不安もあるだろうに、その中で知り合いが居るというだけでも心強いのに、補佐と担当。

　私も先程までは不安だったけれど、結絃ならば私も初日で分からなくて、と確認しながらゆっくりと仕事を進めやすい。知る相手と知らない相手じゃ、気持ちも全く違う。