君と始める最後の恋
 そしてミスはこれだけでは収まらなかった。
 むしろ朝のコーヒーのミスが可愛く見えるレベルである。


「違う!何回言わせんの。こんな簡単な事1回で叩き込みなよ、ポンコツ。」

「す、すみません~!」


 なんて言いながら時には軽くファイルで頭を叩かれ、先輩それパワハラですよと言いたかったが、口が裂けても言えず…。


「…俺、2年前の資料って言わなかった?何で5年前のなわけ。」

「あ、あれ?おかしいな…。」

「走って戻してこい、ダッシュ!」

「そんな犬みたいに言わないでくださいよ!」

「犬にも失礼。」



 そんな会話が止まらないほど私はやらかしまくってしまった。


「(本当情けなさ過ぎる~!)」


 こんな感じで怒涛に時間が過ぎていき、今日は残業で遅れを取り戻す日になった。

 一ノ瀬先輩も残業が嫌いなのに、珍しく一緒に残ってくれている。

 少しずつ人がオフィスから少なくなっていく中、一ノ瀬先輩の早いタイピング音がよく聞こえていた。

 ブラインドタッチと言うのか、画面から顔を動かすこと無く、どうやって文字打ってんのというレベルでキーボードを見ていない。この人が仕事早い理由ってこういうところもあるのかもしれない。

 じーっと見ていると、メールを打ち終えたのか一ノ瀬先輩がちらっとこっちに顔を向けて眼鏡の奥から私の姿を捉える。その何考えているかわからないけど、綺麗な瞳。結構好きかも。
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