君と始める最後の恋
 少しゆっくり話して時間も大分遅くなってしまった。流石に次の日が休みでもいつまでもお邪魔してられないのでお暇することにした。


「ごちそうさまでした!すごく美味しかったです!」

「また類くんと遊びに来てね。」


 そんな温かい言葉を掛けて頂いた上に、沙羅さんと充さんが2人で玄関先までお見送りしてくれる。


「類、送ってってあげなよ。郁ちゃんのこと。」

「言われなくても分かってるよ、兄さん。」

「へ!?いやいや、大丈夫ですよ!」


 2人で話を進めているのを止めて顔の前で手を振る。別にこの時間なら自分で歩いて帰れるし、先輩を煩わせるわけにはいかない。


「いいから。君みたいなのでも、女なんだから。」

「君みたいなのって…。」


 私と一ノ瀬先輩の会話を聞いて沙羅さんが笑っている。


「本当素直じゃないんだから、私の時みたいに自分から送ってく、危ないからって言ってあげなよ。」


 沙羅さん、それは先輩が沙羅さんを好きだから優しくするんですよ。沙羅さんは先輩の気持ちに本当に気付いてないんだ。一ノ瀬先輩の顔を見ると少し複雑そうなやりきれないと言った表情が一瞬見えた気がする。


「沙羅と郁は違うから。さ、行くよ。」


 そう言って背を向けてしまう。私はお二人にもう一度お辞儀をして一ノ瀬先輩の後ろを追いかける。
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