君と始める最後の恋
私の意地悪な指導係
 その仕事のスタイルはあれこれ1週間続いた。酷い時は永遠とコピー機の前に張り付いたり、資料整理で1日潰れたり、書類をホッチキスで止めたりとか本当に地味な仕事。

 その間一ノ瀬先輩は何を教えてくれるでもない。ただ淡々と指示を出すだけだ。

 最初からやりたい仕事できるなんて思ってないけど…、思ってないけどさ…!

 あまりにも酷いので抗議しようかと思っていた頃、一ノ瀬先輩が何かのファイルをドンッと置く。


「これ、目を通しながら企業名順に並べておいてくれる?」


 また雑用…。といい加減うんざりしてきた。1週間ほとんど仕事内容が毎日変わらないなんてこと、新人があるのか。もう耐えられない。と、遂に直談判をすることにした。雑用を渡すだけ渡して放置なんてこんなの指導とは言わないだろう。


「一ノ瀬先輩!相談があります。お時間よろしいでしょうか?」

「…うん、どうかした?」


 今の一瞬私は見逃さなかった。一ノ瀬先輩は時々面倒臭いなと思っているのがこちらに伝わる表情をする。いつもであればその顔で空気を読んで場を改める時もある。だけど今日は、そんな顔をされても今日は引かない。


「私にも仕事を教えてください。入社して1週間ですが、ずっと雑用ばかりです。」


 まっすぐに目を見て伝える私に、一ノ瀬先輩は何を言うでもなくいつも通りの冷めた目でこちらを見つめ返してくる。何を考えているかよく分からない無表情さで。

 何か返してよ、先輩に直談判なんて生意気がすることなのわかって言ってるんだから。その勇気すらも踏み躙るつもり?と、少し引いてしまいそうになるが、拳を握り力を入れてその場にまだ立つ。
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