君と始める最後の恋
　少し時間が経ってからようやく溜息1つ零して「君さ…」と一ノ瀬先輩が言葉をこちらに投げる。もはや呆れた表情を隠す気も無い様だった。


「この一週間、何も身にしないでまじで雑用だけこなしてたの？」

「…と言いますと？」

「資料に関しては君にかなり目を通す時間をあげた。資料整理って名目で。よく関わる人の所にも走らせた。
雑用はこれから営業係じゃなくて補佐に入る君なら段取りよくやってもらわなきゃ困る。その流れをやらせながら教えた、よね？」


　言葉は少なかったけど、そう言われれば自ら学ぶ機会は確かにかなりあった。最初こそ意味があると思ってやれていたはずなのに、雑用ばかり押付けていつしか一ノ瀬先輩が楽をしたいだけと思い込むようになっていた。先輩の言葉はそんな浅はかな自分に気付かせる物があった。


「…ありません。」

「頼まれた事だけやってたらいい訳じゃない。自分でやる意味も考えろ。君が育たなきゃ俺の仕事が増える。」


　それだけ言うと一ノ瀬先輩はパソコンに向かい直して、業務に戻った。一つ一つ必要な事だったと説明されないと気付けなかった。社会人として自覚が無いと言われた様で、悔しかった。
< 5 / 426 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop