君と始める最後の恋
自分の中の約束事
 紬と寝室に籠ってから少し頭が冷えた頃だった。

 頭は冷えても類くんと顔を合わせるのはまだできない。
 合わせる顔が無いから。

 自分の気持ちに余裕が無いなんて理由で八つ当たりなんてしてしまった。

 自己嫌悪に陥っていると、コンコンと部屋のドアがノックされた音がして少し緊張感が走る。きっと相手は類くんだろう。


「入っていい?」

「どうぞ。」


 入ってくる類くんの方は見られないまま腕の中にいる紬の頬を優しく撫でる。

 類くんの表情は見えないけれど、少し間が空いた後優しい声色で、声を掛けてきた。


「…紬を沙羅にちょっと預かってもらって話さない?」

「え?」

「紬が居たら落ち着いて話せないでしょ。沙羅と兄さんにはお願いしてるんだけど、どう?」


 今は何を話せばいいか分からないけど、このままでよくないのもきちんと分かっている。

 紬が居るといろいろ気になって何も話せないのも事実だ。

 逃げてばかりも良くないと思って「今用意します」と短く返事をして一度紬をベビーベッドに寝かせる。

 沙羅さんと充さんも花果ちゃんが居て大変なのに頭が上がらない。
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