君と始める最後の恋
 長い事思ってきたって事は初恋だったのかもしれない。幼かった昔の先輩が、ずっと思い続けてきて今まで気持ちに蓋をして生きてきたと思うと凄く苦しい。


「お互い叶わない恋をしてる仲間ですね。」


 なんて笑いかけると先輩は笑いもせずただただ呟くように「本当、バカだよね君も」と言っていた。

 本当に自分でもバカだって思う。好きになっちゃう前に引けばよかったのに、引けるタイミングなんていくらでもあったのに、引かずにまんまと好きになって、本当に私は大バカだ。


「君は…、俺なんか好きになるべきじゃないよ。」

「え?」


 そう言って私の頭をグッと至近距離まで引き寄せる。

 その距離の近さに動く事は出来なくて、動いてしまったら簡単にキス出来てしまいそうな距離感。こんな距離に今までなったことない。ドキドキしてしまうはずの状況なのに、今だけは嫌な音が鳴っている。


「それとも…、付き合うとか出来ないけど、沙羅の代わりになる?」


 少しだけ怪しく口元に弧を描く。目に光がなくて何を考えているかわからない。沙羅さんの代わりなんてなれないし出来ないこと分かってるくせに、何言ってるの?
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