君と始める最後の恋
「俺、君が思うほど優しい人間じゃないけど。別に気持ちが無くたって抱き締めたり、キスしたり、このまま身体重ねたり。なんてことないんだよ。」


 急に先輩が知らない人になったみたいで怖くなる。声も出なければ拒否も何も出来なくて固まる事しか出来ない。

 ただ急なことにパニックになって涙を流してしまった。先輩は私の反応を見ると、ようやく距離を離す。


「…もう変な憧れとか勘違いなんかしてないで、さっさと諦めろ。君に好かれる様な男じゃない俺は。」


 先輩が離れてようやく身体を動かせた。

 動揺が止まらない私は、自分の鞄を持って急いで先輩の家を出る。怖かった、知らない男の人みたいで。本当にあのままキスされて流されちゃうんじゃないかって怖かった。




『付き合うとか出来ないけど、沙羅の代わりになる?』




 そんなの自分でも出来ないって分かってるくせに何であんな事を言ったの。先輩。
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