俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「来栖さんはこれから、翔とどうしていくつもりですか?」
「私は……」

 こちら抜向けられた彼女の瞳が、不安げに揺れる。それに心をかき乱されそうで、そっと視線を逸らす。私の右手は、無意識に服の下に隠れるリングに触れていた。

「翔さんの考えを聞くまでは、その……」
「別れるつもりはないと?」

 なにかに耐えているような彼女の震える声が、私を責めてくるようだ。

「愛のない関係なんて、虚しいだけよ。翔の心にはまだ、私の存在がいる」

 親密な付き合いをしてきたからこそ、わかるものなのかもしれない。
 その可能性は否定しきれないけれど、やっぱり彼女の言い分だけで判断したくない。

 プライベートでは意地悪な態度をとる翔さんだけれど、彼の言動にはいつだって優しさを感じた。
 牧村さんとの関係が本当なら、翔さんはきっと正直に話してくれるに違いない。彼なら復縁を決める前に私に打ち明けてくれるはずだと、信じている。

 だから、今この場で牧村さんの言葉を鵜呑みにはしない。そこに翔さんへの未練という私的な感情がまったくないとは言わないが、私を信頼してくれている彼に同じように返したいと思っている。

「別れるつもりがないとかそうではなくて。私ひとりで決断する前に、翔さんと話をしたいんです。明日は私も彼も仕事が休みなので――」

 不安げに揺れる彼女の瞳を見ていると、胸をしめつけられる。

「翔と私は、もうずっと想い合ってきたの」

 彼に対して私なりに筋を通したいと伝えたかったのに、彼女に遮られる。
 口調はこれまでの儚く苦しそうな様子だけではなく、苛立ちが滲む。煮えきらない私の態度に、さすがに怒らせてしまったのかもしれない。

「お願い、翔を返して」

 こんな状況でも周囲に配慮してなんとか声量を抑えている様子に、ますます悲愴感が強くなる。

「私には、翔しかいないの。お願いよ」

 繰り返される懇願に、心が揺らぎそうになる。
 瞳を潤ませた彼女は、見ているだけで辛い。

 私はそれほど非情なことを言っているのかと、ここで折れてしまう方が正解な気がしてきた。
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