クールな総長は私だけにとびきり甘い

第1章

その日は、少しだけ、帰るのが遅くなっていた。

 放課後の校門を出て、裏道を通りかけたとき、どこかからか細い鳴き声が聞こえてきた。

「……猫?」

 声のする方へ近づいてみると、古いダンボールの中に、小さな黒猫がうずくまっていた。体は濡れていて、震えている。おそらく、誰かに捨てられたばかりなのだろう。

「大丈夫? ……濡れてる……」

 ことははポケットティッシュを取り出し、そっと猫に差し出した。けれど、ティッシュじゃ、どうにもならない。

(どうしよう。タオルも何も持ってない……)

 困り果てていたそのときだった。
 
 
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