クールな総長は私だけにとびきり甘い
「……ミルク、どうだった?」

 振り返ると、そこには蓮がいた。

 廊下の窓際に立って、片手をポケットに突っ込んだまま。

 少しだけ伏せた目。けれど、確かに――ことはを見ていた。

「元気だったよ。骨にも異常なかったし、すごく甘えてきて……かわいかった」

「……そっか」

 蓮はそれだけ言って、ほんのわずかに目を細めた。

 それが“安心”だったと気づいたのは、ことはの胸がまた少し温かくなったから。

「あの子、たぶん人間が好きなんだと思う。……だから、きっと、すぐ元気になるよ」

「……お前もな」

「え?」

「お前も、人間が好きそうだって思った」

 ぽつりと落ちたその言葉に、ことはは不意を突かれて黙ってしまった。

 否定でも肯定でもない、ただ静かなひと言。
< 23 / 68 >

この作品をシェア

pagetop