さくらびと。美桜 番外編(2)
「ねえ、裕紀」




彼女が突然真面目なトーンで呼びかけたのは帰り道だった。






「私ね、こうやって誰かと過ごすことがこんなに楽しいなんて知らなかった」





その言葉に胸が締め付けられた。






「僕もだよ。美桜と一緒にいるだけで、どんな難しい問題も解ける気がする」






そう答えながらも裕紀は、、本当は分かっていた。





彼女への気持ちがどんどん大きくなっていること。





そしてこの気持ちをそろそろ伝えなければいけないこと。






次の春が来る前に。桜が満開になる前に。新しい始まりを迎えるために。





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