さくらびと。美桜 番外編(2)
その後の記憶は曖昧だ。





病院に駆けつけたとき、廊下のベンチに座る美桜を見つけた。




いつも元気いっぱいの彼女が今は見る影もなく縮こまっていた。







「美桜……」







声をかけても反応がない。彼女の前に膝をつき視線を合わせると、ようやく焦点の合わない目で僕を見た。







「お父さんが……」







その一言だけで十分だった。



彼女の肩を抱き寄せる。




普段なら恥ずかしがって抵抗するはずなのに、今日は違った。





僕の腕の中で泣き崩れながら、「お父さん……お父さん……」と何度も呼び続けていた。







医師から宣告を受けた後も現実感が湧かなかった。






美桜は放心状態で、涙さえ流さない。






彼女が愛していた人が永遠に去ってしまった。






その事実を受け入れることができないようだった。






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