さくらびと。美桜 番外編(2)

第2章 涙と幸せ。

夏の終わりの陽射しが和らぐ頃、美桜は少しずつ変わっていった。






かつてのような明るさが戻ってきたわけではない。むしろ慎重に、一歩ずつ前へ進もうとしていた。






「お墓参りに行くんだけど……一緒に来てくれる?」









そう彼女が言い出したのは事故から二ヶ月が経った頃だった。父の眠る場所に初めて行くという彼女の決意に胸が熱くなる。







「もちろん」

山間にある霊園までの道のりは言葉少なだった。





けれど美桜の横顔には固い決意が見えた。





墓前に手を合わせる彼女の姿は凛としていて、いつものお転婆さは微塵も感じられない。




「ありがとう」






帰り道、突然美桜が言った。





「裕紀くんがいてくれたから……私、ここまで来れた」






その言葉に僕は微笑み返すことしかできなかった。



彼女が自分を必要としてくれることが何より嬉しかった。



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