さくらびと。美桜 番外編(2)




彼女は首を傾げながらも嬉しそうに裕紀の隣に立った。





「君と出会ってから……時間が経つのがあっという間だった」





裕紀は空を見上げながら話し始めた。彼女の笑顔、泣き顔、怒った顔。すべての表情が大切だった。






「美桜が辛いときに一緒にいられて良かったって思う。これからもずっと、君の隣にいたい」





「え……」







「僕の家族になってくれませんか?」






小さな箱を取り出して開けると、シンプルな銀の指輪が月明かりに輝いていた。美桜はしばらくの間固まっていたが、やがてその大きな瞳から涙があふれ出した。







「本当……?夢じゃないよね?」








彼女の手が震えているのがわかる。裕紀はそっとその手を取った。






「本当だよ。一生、美桜を守るから。」






「……嬉しい」





彼女は鼻をすすりながら指輪を受け取り、左手の薬指に嵌めた。その瞬間、裕紀は確信した。この人となら、どんな未来も乗り越えていけると。





< 23 / 97 >

この作品をシェア

pagetop