さくらびと。美桜 番外編(2)
彼女は首を傾げながらも嬉しそうに裕紀の隣に立った。
「君と出会ってから……時間が経つのがあっという間だった」
裕紀は空を見上げながら話し始めた。彼女の笑顔、泣き顔、怒った顔。すべての表情が大切だった。
「美桜が辛いときに一緒にいられて良かったって思う。これからもずっと、君の隣にいたい」
「え……」
「僕の家族になってくれませんか?」
小さな箱を取り出して開けると、シンプルな銀の指輪が月明かりに輝いていた。美桜はしばらくの間固まっていたが、やがてその大きな瞳から涙があふれ出した。
「本当……?夢じゃないよね?」
彼女の手が震えているのがわかる。裕紀はそっとその手を取った。
「本当だよ。一生、美桜を守るから。」
「……嬉しい」
彼女は鼻をすすりながら指輪を受け取り、左手の薬指に嵌めた。その瞬間、裕紀は確信した。この人となら、どんな未来も乗り越えていけると。