ぜんぶ、ちょうだい。



「先輩、あの……ちょっと用事思い出しまして……」



言いながら、心の中で叫んでた。あぁ、もう、最悪。

せっかく会えたのに。

せっかく「おかえり」って言えたのに。


先輩にばれたくない。


他の人とキスしたなんて、絶対に知られたくない。



「す、すみません……また、会いに来ますっ」



逃げるようにその場を離れた。これ以上、先輩といられなかった。


急に、自分がけがれた気がした。

清水のキスが、 清水の言葉が、 清水の手の温度が―― 全部、私の“好き”を汚してしまった気がして。



走って、ひまちゃんのもとへ。

ひまちゃんはもうパンを買っていて、私のことを待っていたみたい。



「ひまちゃん、いこっ」

「えっ、どこに!?」

「教室!」

「こまちゃんが清水と同じ場所にいたくないって、食堂きたのにっ」



そうだよ。そうなんだけどね。

ごめんね、ひまちゃん。いつも振り回して。


だって、こんな私―― 清水とキスして、先輩の前で逃げて、ひまちゃんに頼ってばかりの私――


ますます、先輩に似合わないから。


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