ぜんぶ、ちょうだい。
「……彼女に、して」
喉が鳴るのが、自分でも分かる。
「……うん」
先輩は、もういつもの無表情に戻っていたけど。
次の瞬間、私の腕を引いて――
ぎゅっと、抱きしめた。
「……っ、し、死にそうっ!」
苦しいのと、恥ずかしいのと、嬉しいのとで、頭が追いつかない。
「言っとくけど」
耳元で、低い声。
「付き合ったからには、俺以外のこと考えたら、ただじゃおかないから」
「……先輩、ひどいし、ずるいです。最低です」
本心。
でも、声はちょっと震えてる。
「……うん。やっぱり、やめる?」
そう聞いてくるくせに、抱きしめる力は、全然弱まらない。
なにそれ。
これで「好きじゃない」とか、あんまりだよ。
「……やめません。先輩は、すぐに私のこと、好きになるはずです」
そう言って、そっと、先輩の背中に手を回した。
すると、くすっと、笑い声。
「……吉川さ、誰とキスしたかなんて、どーでもいいよ。そんなの、大したことじゃないから」
胸が、ぎゅっとなる。
「だからさ」
抱きしめる腕に、力がこもる。
「俺だけ、見ててよ」