ぜんぶ、ちょうだい。



困った子を放っておけない性格の私は、人の波をかき分けて声をかけようか、どうしようか迷っていた。

でも、満員の圧に負けそうで、足がすくむ。


声をかけたところで、ちゃんと届くかもわからない。

それでも、何かしなきゃって、心がざわついていた。




──────その時だった。


奥の方から、ひとりの男の子が現れた。


背が高くて、制服の着こなしが綺麗で…何より、顔が整いすぎていて思わず目を奪われた。



彼は、女の子の真後ろに立っていたサラリーマンに、何かを話しかけていた。

声は聞こえなかったけれど、表情は変わらず静かだった。


でもそのサラリーマンは、何を言われたのか知らないけれど、血相を変えて次の駅で慌てて降りていった。



(あ…体調が悪いんじゃなくて、痴漢されてたのか)



電車が、学校の最寄り駅に着いた。

ドアが開く音と同時に、人の波が一気に動き出す。


私は、つり革から手を離して、流れに乗るように歩き出した。


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