ぜんぶ、ちょうだい。



あの電車で、静かに誰かを助けた人。

無表情で、無口で、でも確かに優しかった人。


それからというもの…私はもう一度、真正面から顔が見たい一心で、 彼を目で追いかけるようになった。

廊下ですれ違う時も、遠くからでも、彼の姿を探してしまう。


気づけば、目で追うだけじゃ足りなくなっていて。

声をかけたくなっていて。

名前を呼びたくなっていて。



まんまと、好きになってしまった。



それって本当に好きなの?

そう思われるかもしれない。


だって、話したこともないし、返事すらもらったことがない。

毎朝「おはようございます」って声をかけてるだけ。それだけ。



でも、朝以外で先輩に会えた日は、なんだか気分がいい。

廊下で見かけただけで、今日一日がちょっとだけ特別になる。

逆に、先輩が女の子と話してるのを見た日は、胸の奥がずんって沈んで何も手につかなくなる。



授業中も、休み時間も、帰り道も。

気づけば、いつも先輩のことを考えてる。


声は聞いたことないのに、表情は変わらないのに…それでも、心の中には先輩がずっといる。



これが恋じゃないなら、なんなの?


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