【短編】花が散れば花が咲きにけり
【短編】花が散れば花は咲きにけり
「新城くんじゃん!!」
彼女は安良城千鶴(あらきちづる)ちゃん。僕のクラスメイト。だけど僕は彼女に少し特別な感情を抱いている。それは入学式の日、走って遅刻しそうになってた僕に近道を教えてくれたから。彼女はいいものをどんどん他の人に分けられる優しい人だなぁと思う。
僕が抱いた感情、それは「恋の芽」と言えるような感情だと自負している。恋じゃないけれど恋と似たような感情だ。
ああ、僕は新城景(しんじょうけい)。中二で趣味は読書、友達はそんなにいない隠キャタイプ。でも同じようなタイプの友達・飯田春ことハルには彼女がいるから羨ましい。ま、僕が彼女にできるのは千鶴ちゃんだけだけど。
「ああ、千鶴ちゃん」
僕が返すと彼女は笑った。
白のシャツにチェックのスカートというような僕が通う中学・国立咲川原学園中等部の制服が彼女にはとっても似合っている。彼女はもとより美少女と言えるぐらい綺麗で明るい。到底僕とは釣り合わないなぁと思っているけど、彼女が触ってきたりするとびっくりすると同時に嬉しい。前、ハルがスキンシップは好きな証拠だって言ってた。ハルはそう言う時だけ陽キャになるから。
「ふふふ。今度一緒に図書館に行ってオススメの本を教えてくれない?」
一緒に、図書館に、行く。それって軽いデートなんじゃないの。どうしよう。僕みたいな陰キャが千鶴ちゃんと一緒にデートしていいの。でも断りたくない。千鶴ちゃんは僕の特別だから。
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