溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い

 櫻谷 智弘は、完璧な人だ。

 努力家で、人当たりも良くて、先見の明もある。彼ほど完璧な人を見たことがない。

 だから、


「…別れよ」


 小さく呟いた言葉は、部屋によく響いた。

 
 驚いたように目を見開く智弘。彼に向けて、私はただただ笑った。
 上手く笑えているのかも分からないけれど、そうする他なかった。

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