溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
 厳かなパイプオルガンの音色が、高い天井へと響き渡る。
 扉がゆっくりと左右に開かれると、眩いばかりの光がバージンロードを真っ白に塗りつぶした。その光の中に浮かび上がったのは、父の腕に手を添えた美咲の姿だった。

 1歩、また1歩と進むたび、参列者たちの温かな視線が彼女を包む。最前列で、凜が涙を堪えるように何度も深く頷いているのが美咲からよく見えた。

 壇上で待つ智弘は、いつになく凛々しい顔つきで彼女を見つめていた。
 その視線は、出会った頃から変わらない。迷いも揺らぎもなく、ただまっすぐに美咲だけを射抜いている。

 父の手から智弘の手へと、美咲の手が渡される。触れたその手の平は驚くほど温かかった。

「綺麗だ」

 囁かれたその言葉に、美咲の頬がほんのりと朱に染まる。あれほど震えていた美咲の心は、智弘の体温に触れた瞬間、凪いだ海のように落ち着きを取り戻していた。

 牧師の前で交わされる誓いの言葉。
 美咲は会場のどこかにいるであろう向井の姿を、あえて探さなかった。それは彼が示してくれた潔さへの、彼女なりの礼儀だった。

 「健やかなるときも、病めるときも__」

 言葉を繰り返しながら、美咲は確信していた。
 この先、どんな嵐が来ようとも、彼の隣だけは譲らない、と。

 指輪の交換を終え、ベールが上げられる。重なり合う影に、参列者から大きな拍手が沸き起こった。


 式の後は、抜けるような青空の下でのフラワーシャワーが2人を祝福した。
 色とりどりの花びらが舞う中、美咲と智弘は並んで階段を降りていく。

「おめでとう、美咲! 幸せになりなよ!」
「おめでとうございます!智弘様!」
「お幸せに~!」

 様々な祝福の言葉が、2人に惜しげもなく注がれる。そして太陽の光を浴びて、美咲の薬指に輝くプラチナの輪が未来を予感させるように強く光を反射した。
 その美しさに、美咲はそっと目を細める。

「これで終わりじゃないよね」
「ああ、むしろここから始まるんだ」

 幸せに満ちた2人の笑い声が、澄み切った空へと溶けていくのであった。
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