推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜


「最近どう?」
けほっ、ラーメンを咽せる。
いくら話題に困ったからって、そんな典型的な質問しなくても。
「最近どう?佑月とは。」
「けほっ。」
佑月くんのことを聞かれてたのか。キスされたなんて言えない。

亮ちゃんが麺を啜る。
「ちゅーとかされた?」

「げほげほげほ!」
私はラーメンをむせる。
「分かり易っ。」
亮ちゃんが箸を持ち上げたまま私を見る。
「分かり易いねんな、2人とも。」
亮ちゃんがズズーってラーメンを啜る。
「佑月も、分かり易すぎる。」
え。亮ちゃんを見る。
「ごちそうさまでした。」亮ちゃんが、ぱちんって両手を合わせる。
「じゃ、俺先出るね!」
亮ちゃんが机の上に、一万円を置く。
「ん!」多いです!と言いたいけど、口がいっぱいで喋れない。
財布を出そうとしたら、「いい、いい!」って亮ちゃんが手を振る。「予約してくれてありがと♪」ニカッて笑って、店を出て行った。


ひとりでラーメンを啜りながら、亮ちゃんの言葉を反芻する。
『佑月も、分かり易すぎる』


「……」


……ケホッ。

< 129 / 297 >

この作品をシェア

pagetop