推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜
そうして、眞鍋さんの車で事務所に連行された。


通されたのは、白い壁、白い床、長机が置かれた会議室みたいな部屋だった。
うわ、インスタライブでよく見るとこだ…。


「お掛けください。」
眞鍋さんに促されて、椅子に座る。眞鍋さんが、コーヒーを淹れる。「どうぞ」
「あ、ありがとうございます。」
机を挟んで向かい側に眞鍋さんが座る。
広い部屋で、長机を挟んで一対一。何これ面接?


「それは…?」
眞鍋さんが、私が持ってきた紙袋を指さす。
「あっ、この前借りた、瀬名さんと、三上さんのアウターです……。
家を出る時に慌てて引っ掴んできた。机の上に置いて差し出す。

「お渡しいただけないでしょうか……」

「あぁ、どうも……。」

「その節はご迷惑をおかけしてすみませんでした!」
膝を揃えてぺこぉ!って頭を下げる。

「いや、宮部さんが謝ることではないんでいいんです。瀬名、いい人ですよね。」

眞鍋さんが、コーヒーを一口飲む。コーヒーの湯気でメガネが曇る。

「単刀直入に聞きますけど、このこと誰かに話しましたか?」
「いや言ってないです。あ。」

待てよ。奈緒ちゃんに、私の隣に佑月くんが引っ越してきたことは…言った。

言ったなぁ。言いました。


眞鍋さんが眉間に皺を寄せて紙コップをコトンって置く。
「すみません…。」


私が謝ると、真鍋さんが頭を抱える。
「なぜよりによって隣がファンだったんだ……。」
「なんかごめんなさい」


「あの部屋を取ったのは俺なんです。」
「はあ。」

「撮影現場から近いからいいやと思って内見せずに決めてしまった……。やっぱ内見しとけばよかった。」

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