推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜

「急にすみません。」
ドアの隙間から、眞鍋さん、が、ぺこり、頭を下げて、名刺を見せてくる。

” LunaRise Entertainment マネージャー 眞鍋太一”

LunaRise Entertainmentというのは、佑月くんたちが所属する事務所の名前である。

眞鍋さんは、灰色のパーカーに、黒縁のメガネをかけている。私より少し年上に見えた。

「ちょっとお話し聞きたくて、その…この前、瀬名と三上と会われてましたよね?」

「げ。会いました。」
ガシャン、ドアを閉める。ドアの外から「あっ…」って小さい声が聞こえる。

ドアロックを外して、またドアを開ける。

「あ、よかった、拒否られたのかと……」


眞鍋さんが、表情ひとつ変えずに、ふぅ、って息を吐く。
私の玄関に置いてあるウィズのグッズをちらっと見る。
あ、今絶対、うわコイツオタクやんけ、と思われた。


「ちょっと事務所まで来てもらえませんか?」


真っ直ぐに私の目を見て淡々と言うマネージャーさんに、たじろぐ。

やべ〜何言われんだろ。頭の中はプチパニックで、警察に任意同行を求められるときのシチュエーションに似ている……とぼんやり思った。ドラマでしか見たことないけど。




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