推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜




亮side


「あっはははは……!!」大樹がSNSを見て爆笑している。「めっちゃ叩かれてるじゃん!笑」


只今テレビでは佑月の出演する、記念すべきドラマの初回放送中。俺たちは新曲のレッスン中。休憩時間にスマホを見ると、佑月の演技が下手すぎるとSNSが炎上していた。


佑月はと言うと、世間の声をモロに食らって意気消沈し——などと言うことはなく、差し入れのパンをむしゃむしゃ食べていた。SNSの様子を気に留めるような様子はない。


みんなたくましくなったんだなあ、と感じる。俺らにも世間の声にびくびくしていた頃があったっけ。それが今じゃこれだ。


「”顔は良いのに演技ド下手くそで草”——褒められてるよ!!」大樹が佑月を見る。
「何言ってんだよお前は。」佑月が突っ込む。
大樹に悪意は全くない。


「話題になるだけありがたい。」


俺もSNSを開いてチラッと見る。
“瀬名佑月”の名前はトレンド入りしていた。たしかに話題にはなっている。悪名は無名に勝る——はず。


《佑月くん元気出して!!!》
ファンの子の心配する声が目に入った。目の前にいる佑月を見やる。パンを完食し、パン屋の所在地をスマホで調べている。よほど気に入ったらしい。


「パン、気に入った?」
俺が言うと、佑月がにんまりして頷く。


ファンのみなさま、佑月は元気ですよ。
パンの入っていた箱をスマホでカシャっと写真に撮る佑月を見ながら、心の中で呟く。




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