推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜
「え、ほんまにはじめましてですよね。」
「そうですね、現場とかでお会いしたこともないですよね。」
「そうですよね。あ、佑月がお世話になってます。」
「いえいえ、お世話になってるのは私のほうで……笑」
「佑月現場でどんな感じですか?」
「すごい気遣いいただいて、私が輪に入れないときとか話振ってくれたりします。」
「え〜迷惑じゃないですか〜大丈夫ですか」
他愛ない話をしながら並んで歩く2人。
「なんてお呼びしたらいいですか?なんて呼ばれたいですか?僕がもし彼氏だったとして」
「三上さんが、彼氏だったとして?」
「はい。」
この番組のコンセプトを忠実に守る亮ちゃん。
「萌香か萌香ちゃんがいいです。」
「え〜じゃあ萌香って呼んじゃおうかなあ〜」
「いいですよ。三上さんは、なんて呼ばれたいですか?」
「亮くん」
「くん付け?」
「うん、くん付けがいい。」
「亮くん」
萌香ちゃんが名前を呼んで亮ちゃんを見る。
「なあに〜?」
亮ちゃんが笑う。
『うわっ、今の言い方!』
並んで歩く2人が引きで画面に映される。ここは、横浜のど真ん中。夜のキラキラした店の前を通り過ぎていく。交差点に差し掛かり、信号が変わり2人は横断歩道の手前で足を止めた。
CMに入る。
…………し、しぬ…………!
私は、食い入るように見つめていたテレビから目を離し、ソファに倒れ込んだ。
これが30分も放送されるのか。
まだ開始5分でこれだよ。最後まで持つのか私は。
SNSを見る。
“いまの亮ちゃんの「なあに?」の言い方デロ甘でしぬ 言われたい”
“彼女にくん付けで呼んでもらいたい亮ちゃん……これから私も亮くんって呼ぼうかな………”
“てか萌香ちゃんが可愛すぎる。萌香ちゃんの肩幅、亮の半分くらいだし身長差もあるし体格差メロすぎ”
SNSには、亮ちゃんの彼氏ぶりにメロ散らかすオタクで溢れている。