幼なじみの隠れた執着愛〜再会した彼は策士なCEOでした〜


 両親は何も知らない。
 いつも姉を甘やかしてばかりいるし、エッセイを出すことを聞いて「紗凪はすごいね」と褒めちぎっていた。
 そのエッセイを書いているのは私なのに。

 でも本当のことは言ってない。
 話したところで信じないだろうから。

 この家では常にお姉ちゃんが一番正しい。
 私はいつもお姉ちゃんの影に隠れる幽霊なのだ。


 * * *


 シフトが休みの日、私は地元のカフェでエッセイを執筆していた。
 ノートPCを持ち込み、アイスカフェラテを飲みながらキーボードを叩いている。


「んー、なんだかイマイチだな……」


 締切も迫っているのに行き詰まってしまう。
 ここのところ忙しかった上に筆を進めるのがどんどん気重になっているから、進捗はかなり悪い。

 かと言って今更書かないわけにもいかないし。


「とにかく書こう」


 私はアイスカフェラテをグイッと飲み、気持ちを入れ替えてPCに向かった。
 その時だ。


「――もしかして、望凪ちゃん?」


 男の人の声にビクッとした。
 エッセイ執筆中に名前を呼ばれたから、必要以上に反応してしまった。

 顔を上げると、モサモサした長い黒髪の男性が私を見下ろしていた。
 長い前髪に隠れているが、メガネをかけている。

 その風貌に見覚えがあった。


「えっ……美鶴(みつる)くん!?」
「! やっぱり望凪ちゃんだ」


 隠れた前髪からふわっとした笑顔を覗かせる。
 その優しげな表情は私の記憶の中の彼と変わっていなかった。


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