幼なじみの隠れた執着愛〜再会した彼は策士なCEOでした〜


 まさか美鶴くんが、そんな風に想っていてくれたなんて。
 嬉しいやら恥ずかしいやら戸惑うやら、どうしていいかわからず視線を泳がせてしまう。


「あ、あの……」
「急にごめんね。でも、どうしても気持ちを伝えたかった」
「っ!」
「返事はまだ聞かないから、ゆっくり考えてくれると嬉しいな」
「……はい」


 そう答えるのが精一杯だった。

 その後美鶴くんが送ってくれることになって、二人で駅までの道のりを歩いたけれど何を話したかまるで記憶にない。

 時折美鶴くんが何か話を振ってくれた気がするけど、上の空でなんて答えたかわからない。


「――望凪ちゃん、駅に着いたよ」
「……あ」


 気づいたら駅の前に着いていた。


「えっと、送ってくれてありがとう……」
「いや、今度こそカフェに行くね」
「うん、待ってる」
「望凪ちゃん、」


 不意に美鶴くんの手がおでこに触れた。
 見た目よりも大きくてゴツゴツした手に驚いたと思ったら、軽く触れるだけの口付けを落とされる。


「……へ」
「おやすみ」


 一瞬で唇は離れたが、何が起きたのかわからなかった。


「〜〜〜〜っっ!?」


 声にならない声が漏れ出てしまう。
 美鶴くんは見た目以外は何も変わっていないと思っていた。

 でも、変わったのは見た目だけではなかったようだ。
 いや、単に私が知らなかっただけかもしれないけれど――。


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