雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。
第1章:火曜日
故郷を捨てたことがある人ならわかると思うんだけどさ、
その中にもう一度入るには勇気が必要なんだよね。
一度辞めた部活にまた入るみたいなね。
電車の窓から工場の大きな煙突が見えてきてさ、
帰ってきたという実感が沸いてきて、
最初に感じたのは、どうしようもない懐かしさだったんだけどね。
だけど駅のホームに足を一歩踏み入れると、さっきの懐かしさはどこかに消えて、
目に映るもの全てが敵意に満ちて、だから分厚い壁を両側に建てて、
ずっと誰かの気配を気にしていたな。
駅前で車を借りたんだ。
期間は二週間と記入した。
車を走らせると古い時計のネジを巻いたみたいな時間が動き始めた。
十五年ぶりの故郷。
人口十万人の過疎の町。
何もかも変わっているんだろうなと思っていたけど、案外そうでもなかった。
市役所、消防署、映画館。古いものは古いままだった。
道路が拡張され、新しい橋が出来ていたけど。
高校生の頃よく通ったデパートに入ったんだ。
ここもまた不思議なくらい何も変わっていなかった。
入り口から内装から棚の位置に至るまで何もかも。
目的のものは直ぐに見つかった。
A3の方眼ノート。
それは新しく何かを始める時にどうしても必要なものなんだ。
僕の唯一の流儀というやつさ。
レジも同じ位置にあった。
変わっていたのはレジに立つメンバーだった。
いや、よく見るとメンバーも同じだ。
十五年後の姿があるだけだった。
でも一人、かつては居なかった、懐かしい人が立っていた。
その中にもう一度入るには勇気が必要なんだよね。
一度辞めた部活にまた入るみたいなね。
電車の窓から工場の大きな煙突が見えてきてさ、
帰ってきたという実感が沸いてきて、
最初に感じたのは、どうしようもない懐かしさだったんだけどね。
だけど駅のホームに足を一歩踏み入れると、さっきの懐かしさはどこかに消えて、
目に映るもの全てが敵意に満ちて、だから分厚い壁を両側に建てて、
ずっと誰かの気配を気にしていたな。
駅前で車を借りたんだ。
期間は二週間と記入した。
車を走らせると古い時計のネジを巻いたみたいな時間が動き始めた。
十五年ぶりの故郷。
人口十万人の過疎の町。
何もかも変わっているんだろうなと思っていたけど、案外そうでもなかった。
市役所、消防署、映画館。古いものは古いままだった。
道路が拡張され、新しい橋が出来ていたけど。
高校生の頃よく通ったデパートに入ったんだ。
ここもまた不思議なくらい何も変わっていなかった。
入り口から内装から棚の位置に至るまで何もかも。
目的のものは直ぐに見つかった。
A3の方眼ノート。
それは新しく何かを始める時にどうしても必要なものなんだ。
僕の唯一の流儀というやつさ。
レジも同じ位置にあった。
変わっていたのはレジに立つメンバーだった。
いや、よく見るとメンバーも同じだ。
十五年後の姿があるだけだった。
でも一人、かつては居なかった、懐かしい人が立っていた。