雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

第4章:金曜日

昼休みはきっちりと十二時から始まった。
あまり時間がないという洋介に僕は市役所の屋上に呼び出されたんだ。

「昨日は行けなくて悪かった。急に親父に呼び出されて」と洋介は言った。

「エリカと結婚するんだって?」

「ああ、最初に言うつもりだったけど、なんかこう、言いにくくてな。まあ、腐れ縁だし。本当は昨日、二人で行って言うつもりだったんだ。俺の口から言いたかったんだけど、まあそういう事だ。エリカには会ったんだろう?」

「エリカから聞いてないのか?」

「昨日は会社に泊りだったからな。ここにもいつまで居るかわからないけど、居心地は良いからなあ。あ、それで水路の件、今、調べてる。所有者はわかったけど、実権者が他に居る。まあ、直ぐにわかると思うけど。それで計画はどこまで進んでるんだ?」

「まだ、企画段階だ。鶏が先か、卵が先か。そういうところだ」

「それには地元の不動産屋が何かと必要だろ?」

「そういう事にはなる」

「また、近いうちに会社に来てくれ。親父が会いたがってた。それはそうと、今度、みんなで飲もう。地元に残ってるやつが何人かいるんだ」

父親が絡んでいるドス黒い水面下の思惑。
全く容赦がない。
洋介は何も知らないんだと思った。
人は変わる。
でも根っ子は変わらない。
僕だってそうだ。
根っ子は変わらないんだ。
どんなに強がっても。

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