隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 キョロキョロとする茉結莉の前で、森野が行き先を告げると、車はゆっくりと発進した。

(運転手さんがいるなんて、森野さんって、どういう人なの……?)

 戸惑ったまま車に揺られ、しばらくして到着したのが、このハイブランドショップの前だった。

「ドレスコードのあるレストランを予約したから、少し身支度を整えようか」

 森野の声にぽーっとしながらうなずいた茉結莉は、ふと自分の姿を見て思わず悲鳴を上げる。
 事務所からそのまま電車に飛び乗った茉結莉は、胸元に“ホシ音響株式会社”と紺字で刺繍された淡いブルーの作業着を羽織ったままだったのだ。

「こ、こんな汚い服でごめんなさい……すぐに脱ぎますから!」

 茉結莉は道路の脇にかけて行くと、慌てて作業着を脱ごうとする。
 すると「そのままでいい」と、茉結莉の手を森野がそっと止めた。

「だって、森野さんに恥をかかせちゃいます」

 ただでさえ作業着の下も、仕事用のニットと黒のパンツというスタイルだ。
 こんなみすぼらしい自分を連れて高級店に入るなんて、森野の評判に関わったらと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
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