隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 でも森野はそっと首を横に振ると、泣きそうな顔を上げた茉結莉に優しくほほ笑んだ。

「俺にとって、その作業着はずっと憧れだったよ。何も恥ずかしいことなんかない。自分の会社に誇りをもつんだ」

 森野の低くて芯のある声に、茉結莉ははっと顔を上げる。

(あぁ、そうだ。おじいちゃんがつくった“ホシ音響”は、私にとっての誇りだ)

 茉結莉は潤んだ瞳を上げると、脱ぎかけていた作業着に再び袖を通す。

「さぁ、行こうか」

 手を差し出す森野の声に、茉結莉は「はい」と答えると、背すじを正してショップに足を踏み入れた。

 それからは、ただただ圧倒されるばかりの時間を過ごす。
 煌びやかなショップの中で、上品なスタッフに促されるまま何着も試着をし、森野の意見も聞きながら、その中でも一番シンプルなアイボリーのワンピースを選ぶ。
 着替えた後はヘアメイクまで整えてもらい、茉結莉は自分ですら見たことのない姿になっていた。

「驚いたな……」

 支度が終わり森野の前に立った時、そう言って照れたように頭をかく森野に、茉結莉は満面の笑みを見せたのだ。
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