隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
「いやぁ驚きましたよ。ホシ音響さんと言えば、お嬢さんが三砂さんと結婚されたとか。もしかして?」

 機械の音に負けないくらい大きな声で、社長の岩竹がにんまりと笑顔を見せる。

「えっと……私です」

 茉結莉はやや頬を染めながら、小さく首をすくめた。

「おぉ、それはそれは」

 岩竹は豪快に笑うと、嬉しそうに工場の中の小さな商談スペースに茉結莉を案内する。
 簡易なパーテーションで仕切られたスペースで、茉結莉はパイプ椅子にちょこんと腰かけた。

「ついに三砂さんも身を固められましたかぁ。どこから縁談が来ても、すべて断ると有名な方でしたからね」
「え? そうなんですか?」

 驚く茉結莉に、岩竹は大きくうなずく。

「えぇ、そりゃあもう。あれだけ優秀な上に、美男ですからなぁ。引く手あまたでしたでしょう」

 岩竹の言葉に、茉結莉は人目を惹く三砂の姿を思い出して妙に納得する。
 すると「それにしても」と岩竹がにんまりとした顔を覗き込ませた。

「よほど心に決めた女性がいるのだとは思っていましたが、あなただったのですね」

 がははと笑う岩竹に、茉結莉は大きく両手を振った。

「いいえ、そんな。私たちは、ただの形だけの夫婦ですから……」

 小さくうつむく茉結莉に、岩竹は「ほお」と不思議そうに眉を上げると、しばらく口を閉ざした。
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