隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 茉結莉は涙ぐんだ顔を上げると、ベッドに腰かける三砂の顔を見つめる。
 その腕には点滴が繋がっており、左の脇腹には痛々しく包帯が巻いてあった。

 あの後、警察には三砂が事情を説明してくれ、茉結莉は三砂と病室に二人きりにしてもらった。
 幸い三砂の怪我の状態は軽く、数日で退院できるだろうと言われた。

「本当に、無事でよかったです」

 茉結莉は声を震わせると、両手で顔を覆う。

 三砂の顔を見るまでは、悪い想像ばかりが頭をよぎっていた。
 このまま二度と三砂に会えなかったら、自分は生きてはいけないとまで思っていたのだ。

「心配かけてすまなかったな」

 三砂はそう言うと、茉結莉の震える肩に優しく手をかける。
 大きな手のひらから伝わる温もりは、不安でたまらなかった茉結莉の心をゆっくりと溶かしていく。

 しばらくして、ようやく安心した茉結莉は、涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げた。

「犯人は、以前買収した企業の関係者だ」
「そんな……」

 茉結莉は悲痛な声を上げる。
 三砂を刺した相手は、事件の直後にその場で取り押さえられたらしい。
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