隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
「もう十分だ」
「え?」
「茉結莉に、そう言ってもらえただけで、俺は満たされる。俺が今までやってきたことの全てが報われるんだ」

 三砂の低い声が身体の芯に届く。
 茉結莉は三砂の腕の中でぎゅっと目を閉じると、「はい」とうなずいた。

 しばらくトクトクと一定のリズムで響く、三砂の鼓動の音を聞いていた茉結莉は「それに……」という声にふと顔を上げる。
 三砂はそっと腕の力を緩めると、茉結莉の顔を愛しそうに見つめた後、おでこにコツンと自分の額を当てた。

「茉結莉が廊下で、俺の妻だと叫んでくれたしな」

 くすりと肩を揺らす三砂に、茉結莉は途端に顔を真っ赤に染める。

「あ、あれは……その、勢いというか」

 慌てて三砂を見上げた茉結莉は、目の前で自分の顔を覗く深い瞳に息をのんだ。

(あぁもうダメだ。私は、慶一郎さんが愛しくてたまらないんだ……)

 そんな茉結莉を見透かすように、三砂は瞳を細めると再び茉結莉を抱き寄せる。
 ゆっくりと近づく三砂の吐息を感じながら、茉結莉はやっと自分の気持ちに素直になると、そっと目を閉じた。
 窓から差し込む穏やかな夕焼けは、お互いを慈しむように唇を重ねる二人の息づかいを、いつまでも優しく包み込んでいた。
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