隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
「この話には続きがあるんだ」
「続き……?」
「その、言いづらいんだが……茉結莉の結婚話が出ている……」
「結婚話……?」

 唐突に出た“結婚”という二文字に、茉結莉の頭はフリーズしてしまう。
 茉結莉は祖父の大切にしてきたこの会社を支えたいと、必死に仕事だけに打ち込んできた。
 当然恋愛の経験すらないのに、いきなり結婚と言われても訳がわからない。

「先方の代表が、茉結莉との結婚を希望している」
「なんで……私と?」

 戸惑う茉結莉の前で、父は大きく首を横に振った。

「何か思惑があるんだろうが、代理人も詳しくはわからないんだそうだ。でもね、茉結莉。これはうちにとっては願ってもないチャンスなんだよ。結婚を承諾すれば、茉結莉は経営陣に残れる。先方は形だけの結婚でも良いと言って……」
「ちょっと待って!」

 憤慨する茉結莉の前で、父は寂しく笑うとその場で茉結莉に大きく頭を下げる。

「茉結莉、お願いだ。みんなのために、うんと言ってくれないか」

 初めて聞く父の感情を押し殺したような低い声に、茉結莉はただその場に立ち尽くすしかなかった。
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