隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 それからしばらくして、茉結莉と三砂は園子の家を後にした。
 駅までの道のりをゆっくりと歩きながら、茉結莉はそっと三砂の横顔を見上げる。

「慶一郎さん……帰りがけに、叔母さんが言っていたことって……」

 茉結莉が口を開くと、三砂はややバツが悪そうな顔をした。
 茉結莉はその顔を見ながら、園子との会話を思い出す。

 園子は、部屋で抱きしめ合う二人を見ながら「お互いの初恋相手と結婚するなんて、まるでおとぎ話みたいね」と、くすくすと肩を揺らしたのだ。

「初恋?」

 その言葉に、茉結莉は不思議そうに顔を上げる。
 茉結莉にとって三砂は初恋相手だが、三砂にとっても茉結莉が初恋ということなのだろうか。

(ま、まさか、そんなことはないよね?)

 すると、恐れ多いと首を振る茉結莉に、園子はさらに耳打ちしたのだ。

「お父さんがよく言ってたのよね。『慶一郎くんは、頭はいいし手先も器用だが職人には向かない。あの子は茉結莉が来ると、すぐに手元が狂う。あれは茉結莉に相当惚れてるな』ってね」

 茉結莉は園子の楽しそうな笑顔を思い出すと、再び三砂の顔を覗き込んだ。
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